TOP高山のチョウシロチョウ科クモマツマキチョウ


クモマツマキチョウ Anthocharis cardamines

クモマツマキチョウ吸蜜

 日本アルプスなどの急峻な崖に挟まれた谷では、6月になってもまだまだ雪が解けず、雪渓となっている。しかし、その脇の土手の草付きには、陽がよく射し込み、もう初夏の香りがするくらいだ。本種と出会うのはいつもそんな場所だ。
 出会いのドキドキと緊張はいつも変わらない。現れるのはいつも突然。オスであれば、鮮やかなオレンジ色で存在感を示しながら、渓流に沿ってやってくる。右に左に飛びつづけ、一向に止まらない。

吸蜜するメス
後翅裏面の唐草模様が美しい。
花はクモイハタザオ
(2003.6 南アルプス市)

クモマツマキチョウ♂

本種への熱い思いは何だろう。尽きることのない焦がれる思い。姿を見ることのできない愛しい人への片思いか。本種は、イギリスでは普通種だという。飼育すればたやすく増えるとも聞く。もしも、ありふれた存在だったとしたら…。それでも、私の思いは失せてしまうだろうか。

飛翔の合間に下草へ止まったオス
休憩だろうか、それとも吸蜜?
この日、オスのオレンジの翅が写せたものは、
ようやくこのショットくらい…。

「クモマツマキチョウの美しい飛翔シーンの写真を撮影したい」これは毎年考えるテーマである。
 「信州のチョウ(信濃毎日新聞社’96年発行)」の36ページには、残雪の残る渓谷、岩肌や青空とともに写されたこのチョウの美しい飛翔写真が掲載されている。この写真のように美しいステージを背景に切り取り、その中で生き生きと飛翔する姿をシャープに写しこみたい。しかもオスの美しいオレンジ色がとらえられていて、できれば翅裏の緑の唐草模様も写っているといい…。
 こうした生態写真を撮るには、いったいどれだけ条件が重なるのだろう、そしてそれだけの条件を満たすシャッターチャンスは、どれほどの少なさか。
 チョウの生態写真でのひとつの目標・夢。

 足場の悪い渓谷で、直線的に飛ぶこのチョウをフレームにおさめることは難しい。ようやくフレームに入ったわずかなものもピンボケばかり…
 2003年に撮影できた飛翔写真で、もっともましだったものが右に掲載したもの。自分にとっては思い出深いものだが、自慢できるものではない。夢は遠い。

クモマツマキチョウ飛翔

飛翔
 (残念ながらメス)

クモマツマキチョウ産卵

産卵
(2003.6 南アルプス市

 2003年の南アルプス市では、産卵シーンの撮影ができたことも幸運だった。
 母蝶は、吸蜜のために花から花をっ飛んで移っていたのだが、産卵はこの吸蜜のついでに、という感じで行われた。
 吸蜜も風でゆれる花の先にぶらさがって行うのだが、産卵のために腹部を持ち上げるように曲げる必要があるので、窮屈そうな不自然な態勢になってしまう。

ミヤマハタザオの花蕾に産まれた卵
(大町市 2001.6)

 本種は、混生するスジグロシロチョウやモンキチョウのように葉には産卵しない。場所は、決まって花の付け根あたりだ。それは、孵化した幼虫に、始めにやわらかな花びらを食べさせたい、という意図が母蝶の本能に組み込まれているのだろうか。
 産卵されたばかりの卵は、白色をしているが、1日もたてば、写真のように鮮やかなオレンジ色に色付く。これも異なっている。

卵


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