TOP高山のチョウシジミチョウ科オオゴマシジミ


オオゴマシジミ  Maculinea arionides takamukui

オオゴマシジミ

メス カメバヒキオコシにとまる
(2003.8.6 新潟県湯沢町)

 人も立ち入らないような深山にすむ大きなブルーのシジミチョウ。
 分布する地域は、中部山岳から東北地方を縦断し、北海道の渡島半島までとなっているが、特に中部山岳でのこのチョウのすむ場所は、深山の沢を登り詰めた場所ということになっている。
 北海道・東北では、さほど標高の高くない場所にもいるのかもしれなが、自分のそういう実感から、高山にすむチョウの仲間に入れた。
 田淵行男もいわく「亜高山チョウ」。
 生息環境の自然度の高さ、出会うことの困難さをとっても、高山のチョウとして十分横綱級の種類であると感じている。

 新潟や群馬が身近な私にとって、その地域でこのチョウと出会うことは、ひとつの目標であった。
 北アルプスでは、ごく整備された登山道の途中で会える場所を知っていたが、どうせ撮影するならほかの貴重な地域のものを撮影したいと思っていた。

 出かけたのは、道なき沢を登ったポイント。下草が生える林の中を、コケで足場の悪い沢を一歩一歩つめていった。ミヤマイラクサも多く生え、うっかりさわるとたいへん痛い。何度も足を滑らせた。
 やがて森が開けた明るい斜面に、食草のカメバヒキオコシやクロバナヒキオコシが生えだし、このチョウに会える期待感が高まる。
 しかし、現れてくれない。

オオゴマシジミ翅表

翅表はゴマシジミより深みのある青。
北アルプス産のメスは変異として白味が加わる

 もっと山深いところへ行かねばだめか、と、さらに沢を詰め、広い斜面に出た。そして、びっしりと生えた背丈より高いカメバヒキオコシをかき分けて出会ったのは…なんと、オオゴマではなく、真っ黒な大グマであった。
 日当たりの良い場所で昼寝でもしていたのか、こちらと眼が合うや、驚いたのか一瞬の間に飛び起きて駆け上っていった。
 驚いたのはこちらもで、息を飲んだ。声も出たのか出ないのか、なにせ3mほどの至近距離で遭遇してしまったのだから。
 今となってはノンキな話だが、クマが走る方向がこっちだったら、あぶなかった。

 そうした「命がけ」に報いてくれたのか、その後、先ほどの場所に戻ると、どこからか大きなブルー現れてくれた。撮影にも応じてくれたのがこのページに掲載したもの。
 踏み後と思ってたどった道は、おそらくクマの獣道だったのだ。こんな極端な環境にぽつんといるのには、非現実感さえ伴う。ともかくいてくれたのがうれしかった。

 かなり飛翔能力は高いようで、飛翔は素早く、活発に飛び回る。
 メスで、見ている目の前でカメバヒキオコシの花穂に次々と産卵していった。まるですぎていく夏の日を惜しむよう。合計する1頭がたいへんな数を産卵するのではないか。
 このチョウの生活史にふれれば、幼虫は、4齢まで花や蕾を食べ、以降はヤマアシナガアリの巣に運ばれ、アリの幼虫を食べるという特異なもの。
 アリに生活を依存する他のチョウと同じくして、局所的、数も少なくなってしまうのだろう。
 深山の渓谷にいつまでもい続けてほしいと心から願う。

食草カメバヒキオコシ(上)
いかにもシソ科らしい花ぶりだ

(下)メス 花蕾に産卵

産卵


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