TOP高山のチョウタテハチョウ科オオイチモンジ


オオイチモンジ Limenitis populi jezoensis

 タテハチョウの仲間でも大型で、凛とした独特の雰囲気と黒白と翅裏のチョコレート色の色彩で、多くの愛好家を魅了する。

 名前はイチモンジチョウの大きいやつというくらいの意味。イチモンジチョウは、どこでもみられるチョウだけれど、こちらは北海道以外では、中部山岳も、上高地を中心にその周辺のごく限られた場所でしか会えない。
 八ケ岳では、現在もごく少ないながらいるという噂だ。私も一度、ツートンの大きなタテハチョウが滑空して木の梢に止まったのを遠めに見たことがある。そのときは、一瞬オオムラサキだろうかと思ったのだが、よく考えれば場所が高すぎる。それが、一度だけの出会いだったと思うことにしている。
 長野県中央アルプス、川上村や栃木県奥日光の地域にも、生息していたとのことだが、現在でも残っていてくれるのだろうか。

オオイチモンジ

夕刻、川べりの堤防に吸水。
ほかのチョウが来ると追いかけて飛び立つ
(2002.7 長野県上高地)

飛び立っても同じ場所に戻ってきた

 本州では、1500m辺り以上の地域にすんでいるので、高山蝶の仲間に数えられている。
 北海道では、低地にもよく見られ、深山より人に近い場所にいるチョウと感じた。山奥ほどたくさん会えるだろう、とどんどん林道を登っていったのに、全く会えなくて、こんなはずじゃないのに、と山を降りたら、開けた林道や人家の裏庭のような場所のほうがよほどいた、ということがあった。

 出会えるポイントは、川が近くを流れていることが条件。また、護岸ブロックや橋、林道の斜面など人間くさいところがよい。
 ポイントが、川沿いであることは、このチョウの幼虫には、ドロノキかヤマナラシの若木がいるということで、これは川辺の樹木なため。かつときどき洪水による木の若返りが必要なのだ。本州の山あいでは、砂防ダムや護岸工事が進んでいるから、木の更新ができなくなって、このチョウがいなくなってしまったのだろう。

梓川
棲息地のひとつ、上高地の梓川河岸(上)
 

 また、このチョウは、希少性と裏腹に、とぼけた味わいも一番。実際に、このチョウと会うと、おおらかでのんきな性格に驚くだろう。
 オスはよく地面に降りて吸水をするが、熱中して周囲のことに気がつかないのか、おおぼけなのか、手づかみできてしまうほどだそうな。

 網をかぶせても、網に入っていないので逃げられたのかと思ったら、そのまま止まっていた、という話も聞いたことがある。(ちなみに群馬県、長野県では採集禁止となっている。念のため)
 人を怖いものと思わず、むしろ好奇心があるかのように、まとわりついてくることもあるくらいだ。

 ところで吸水は、「吸水」といっても水のないような岩もよくなめている。この行動の目的は、水分補給というよりも塩分などのミネラルを摂取しようとしているのではないだろうか。

♂ 石の表面を熱心になめる


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